徳重校の池田です。
最近、大学入試改革に関連して、英語の民間試験に関するニュースが世間を賑わせていますね。受験生のみならず、関心が高い話題かと思いますので、以下、私の個人的な意見を述べたいと思います。

2020年の小学校学習指導要綱改訂から始まる一連の教育改革のひとつに大学入試制度改革があります。かつて、2000年の教育改革では、子ども達の「生きる力」を向上することを目的に、中学校で「総合的学習の時間」が導入されました。しかし、総合的学習の時間は、評定や入試に関係付けられないため、真剣に学ばない、真剣に教えない、果ては、無駄な時間、と言われるようになってしまい、改革は失敗に終わりました。その反省を踏まえ、2020年の教育改革では、大学入試で「生きる力」を問うように改革する、その結果、必要に迫られて高校の授業が変革される、その結果、中学の教育も変革される、ということを目指して大学入試改革が行われることになりました。英語の民間試験や、数学国語の記述問題が注目されていますが、文科省が目指した方向性は「読解力」と「分析力」の向上です。その手段として、今日報じられているような入試改革案が定まったと言われています。

さて、英語の民間試験導入に関して、私はどう思っているかというと、個人的には、「入試制度は私が決めるものではないし、私の仕事は決められた制度の中で、生徒を合格される方法を編み出すのみ」と考えておりますので、消極的な賛成です。文句を言っても仕方ないと考えていました。

では、本音で、従来のセンター試験と民間試験ではどちらが良いと思うか、と言えば、私も、やはり、従来のセンター試験の方が良いと思っています。

まず、「センター試験は傾向が決まっており、攻略法が決まっているので、英語本来の力が試せない、話せるようにならない」という批判がありました。しかし、それを言ってしまえば、どんな民間試験だって「傾向が決まっていて、攻略法が決まっている」のですね。英検であれば、各級で決まったイディオムを暗記し、作文では手数を多く書く、TOEICであればスピード勝負でひたすら早く解く練習とリスニングを鍛える。どんな試験でも真の実力を測れるものではありません。どうせ攻略法が決まっているなら、その中でセンター試験はどうでしょうか。その内容は非常に基本的で、大学で引き続き英語を学習する上での基礎となるような良問です。高3生の段階としては、欲張って全国の全高3生がペラペラにしゃべれる必要もないと思っています。ならば、高3時点で、どこまでの基礎を押さえるべきか?その指標が現時点で最も的確に示せているのがセンター試験であり、他の民間試験にそこまでの良問が揃っているとは思えない、現時点ではまだまだ性質が違うものであると思っています。

もう1つ問題点があります。それは、民間試験が特定の1団体ではなく、複数の団体による複数の基準が混在していることにあります。これを測る共通指標としてCEFRがありますが、専門の大学教授が指摘するには、このCEFRの対照表がまだまだ信頼度に不安があるとのことです。それが今回延期になった一番大きな理由なんだろうと思います。また、とある大学教授が指摘しておりましたが、民間団体が競合することによって、「よりハイスコアを取りやすい」という売り込み合戦になりかねないという懸念が持たれます。この点に関しては私も、現場で見ていて、どことは明記しませんが、近年明らかにハイスコアの大安売り傾向にある団体もあります。

繰り返しますが、私は、決められたことには文句を言わず粛々と従えば良いという考えの持ち主です。しかし、このように覆ることがあるのであれば、以上の理由により、延期になって良かったと思っています。